明治29年7月と9月の二度にわたり，岐阜県西南部は集中豪雨に見舞われました。
　明治29年7月19日，豪雨により，この地方を過去最大規模の洪水が襲いました。岐阜県西濃地方は一面，湖のようになり，県内で49人の死者を出すという災害でした。
　更に追い討ちを掛けるように，9月6日から激しい雷雨が降り，再び大水害が発生しました。被害は西濃地方に集中し，大垣市では揖斐川をはじめ市内を流れる四本の川から水があふれ，地面から4.2メートルも浸水する箇所もありました。今でも大垣城の石垣には，このときの最高水位を示す線が引かれ，当時の被害を今に伝えています。
　長良川流域では，特に中・下流が被害を受けました。堤防の決壊は1000箇所を越え，水が引くまで往来は舟で行われたといいます。決壊を免れたのはわずかに岐阜市の加納輪中と，安八郡の森部輪中，牧輪中の三箇所だけでした。しかしこれらの輪中でも中に水がたまり，排出できない状態でした。
　この水害を機に，三重県の長島輪中では北海道へ，海津郡の高須輪中では名古屋や三河安城へ移住していく人も多く出るなど，人々に大きな影響を与えたのでした。
　その後明治33年，木曽三川分流工事がほぼ完了し，流域の大水害は次第に減少していきました。