T.Nさん・奥さん 雪駄の思い出

「皇国の荒廃この一戦にあり。」日本の国のことやな。日本の国が発展するのも、廃墟になるのも、この一戦にありということを、山本さんは言ったんやね。で、どちらにしても一層努力せないかんよっちゅうことを。おじさんたも結構、石投げをしたり竹槍持って。お母さんは1年か2年か。(小学校、やない、国民学校の1年やね。)上がったくらいやな。国民学校やで。上がったくらいや。(上がったばっかしで、終戦。)おじさん知らんもんで。

(みんな、大きい人に連れてってもらって逃げたはいいけどね。折角新しい草履を買ってもらったんやわ。どこで買ったんか分からんけどね。それを、逃げるときにこんな溝の中に落としてまって。ほんでもう拾いに行く、帰るってこともせんのや。怖くて。ほんでそのまんま来て、「ああ、もったいないことしたな、もったいないことしたな」って。あのころは配給でしかもらえんかったね。履物なんかね。でそれをどこでどういうふうに手に入れてもらったか知らんけど、藁草履やない普通の雪駄みたいな。ああいうのを。結局そこで新しいのを落としてまって。)