その仕事終わって今度は、自分の身の回りのものかかえて、まあその時はぼけーっとしちゃって眠たいだけで、何しとるか分からんような状態やったけども。そこを爆発する、電気を送るで「早う逃げてこい」って。自分が危ないで早う逃げて来いって。ほんなことやったことないけども、まあっちって。どっちみち死んでもええやって言って、全部シンカンに電池入れて。爆ぜて、建物が潰れてまうまで見届けて。
ほして、いよいよ今度自分た逃げる。逃げるっちって、その玉音放送ちゅうのを私ら聞いたことないんやね。知らんうちに「日本戦争に負けた」ってそういうことになって。で「今までやったことは絶対人に漏らすな」。この本を買うまで、よう人に話さなんだ。うん。止められとったんやね。ほんで、銃も帯剣も家まで持って家まで帰って来とるんやで。命は助かった。この部隊に入ったばっかに。それでその隊員が散らかってまって今の行為が外部に知れ渡ると、酷いことになるもんやで。ほんでソ連に抑留することもなし。なんとか無事に帰れたが、まだこれから帰る後の話をちょこっとしたいんやけど。その辺だけは、自分では幸せやったなと思うんやな。
ほんで爆破終わって建物潰れてまって、何にも見えんようになった。よしもうこれで行けるわと思ったら、汽車に乗れって。汽車に乗ったことはええが、汽車は有蓋車と無蓋車とあって。有蓋車というのは、屋根のある風が入らん汽車やね。ほんな暑てうだるような暑さや中は。そんなやつに入らなあかんかった。食糧なんかは誰が積んでくれたか分からんが、積んだって。米なんか十分あったんや。でそれを積んで出かけた。が、途中で全部現地人に盗られちゃった。盗られるとしゃあないまあ大勢来て、こっちは鉄砲持っとったけども弾はあらへんし。剣あっても人を殺すことはできへん。汽車で、隅っこの方で隠れとった。そのうちに全部、引きずりおろされ盗られちゃった。